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三重県立図書館のフォーラムに出かけてきました。その2 対談を長々と書いてみた。

図書館 イベント

こちらもあくまでivory_reneのメモできる範囲の記録です。
(2) 対談「3.11から未来へ」;書けるだけ書いてみましたがっつりメモ版

  • 鷲田氏

いいお天気なのにこんなに暗い所に*1来て下さってありがとうございます。津波という言葉はここ津からきているようで何とも言えない気持ち。
震災後50日頃、せんだいメディアテーク*2が再び開館した時に出かけた。50日で図書館に来られる? と思っていたが、カウンターに行列ができ、閲覧席がいっぱいだった。電気も通っていない中でどうして、という驚きがあった。
その時図書館員たちと話す機会があり、次のような話を聞いた。震災後半月ほどは、街が開いていた。余震が続く不安のなか、年齢や性別をとびこえて人々は声を掛け合っていた。けれど今は街が閉じている。秩序が戻ってきた。あの半月は祝祭だった、という表現をしていた。街が閉じて行く中で外からは「頑張ろう」と言われ、どこもすべて震災の話になり、言葉も感情も一平面になっている。皆と同じ言葉を使いたくない気持ちで祝祭といったのだろうか。自分自身それに近い思いがある。

  • 植島氏

震災後に鷲田氏が朝日新聞によせた言葉*3や阪大総長としての訓示*4は素晴らしかった。確かに震災後の報道で余計なことを言えない雰囲気はどうかな、と思う。
私は神様が少しだけ身近になったと思う。宗教、自分を超えたものへの関心の高まりがあった。

  • 鷲田氏

宗教は人の力ではどうしようもない人間を超えたものを感覚としてわからせてくれる。無力さや能力の限界を知らせてくれる。
阪神大震災は都市型で、圧死や火災による死が多かった。東日本大震災は範囲が広大で被災の形が多様。原発の賠償などで被災者間の格差が生まれ、被災者の中でも裂け目が生まれている。関西からだとボランティアも行きにくく、覚悟を決めていかないといけない。行きたいけれどいけない、居ても立ってもいられない気持ちがあったと思う。そこで、感情の実感として本気で祈ることがうまれた。祈ることが意味のあることになった。

  • 植島氏

キリスト教ではチャリティー、人は違う、貧しい人を助けようという個人主義の発想。対して仏教は慈悲、人は同じ苦しみをもっているという考え方。貧しくても与えられるのが祈り。(冒頭の図書館員の)街が開いているというのも、温泉などのような社会的制約から離れたコミュニタスの状態。
ポール・クローデルが、勿論それ以外も、日本を災難の多い国と言っている。災難は両刃の刃。
中央構造線には必ず神社がある。東日本大震災で被害を受けた場所にも、必ず神社がある。災難を通って神も移動する。

  • 鷲田氏

そういうものは語り継がれる。

  • 植島氏

中央構造線は活断層の道だが、鉱物資源の道でもある。鉱物資源は活断層からしか採れない。また、宗教者の道でもある。

  • 鷲田氏

一番危険なところが一番多産なところであり聖なるところということ。
ただ、高度な技術社会になったときの災害は自然とは別の形別の場所で起こる。東京のカタストロフィーを感じた。電車が止まると殆どの人が家に帰れない。メガロポリスでもそれはないと思う。震災後は寺田寅彦の天災をはじめとする文章を読んでいた。そのなかに「災害は文明が進むほどひどくなる」というものがあった。確かにそう。
今回の震災で新しい聖地が生まれるかもしれない。

  • 植島氏

津と岩手は似ている。リアス式海岸で、津波に襲われやすい。かつて日本人は移動する民であった。今回の震災ではそのもっともprimitiveな部分に非画を受けたのでは。「漢書」地理志に、倭人は海の専門家だと書いてある。倭人の後裔である我々は震災で海の専門家であることを意識したのではないか。
日本縄文時代石器食料総説*5を読むと、縄文人の殆どは海に依拠して暮らしていた。定着農耕民族になったのは農業以来。

  • 鷲田氏

網野善彦さんの本にロシアを地図の下にした地図の載っているもの*6があった。この地図*7を見ると日本はユーラシア大陸の岬で海洋の民だということがよくわかる。

  • 植島氏

租庸調の調だとか、延喜式を見ていると海産物が出てくる。

  • 鷲田氏

ファッション論をしようとしたときのこと。縄文から、弥生→→明治の間はピアスが消えた。入墨や鉱物を見につける習慣がなくなった。

  • 植島氏

食事の禁止などのタブーもそう。
3.11は海の民である日本人の核心を襲った。石巻や釜石は心の中心部に届いているから感じ入る。

  • 鷲田氏

農業が定着、漁業が移動は少し違うと思うので補足。漁港付近に住む人は住むには厳しすぎるところを先祖代々拓いてきた。対して東京は移動の民族になっている。住まいは寧ろ動産。胸に突き刺さるような移動とお金の論理での移動が出てきたのが現代。

 <松原氏*8の写真を見る>
 

  • 植島氏

何もなかったところにだんだん人の影が出てきていた。

  • 鷲田氏

自然って傷つかないのだと思った。戦争が終わったとき、どうしてこんな日に空が晴れているんだろうという怖さと似ている。

  • 植島氏

ギリシャ語のピュシスは人間のいる世界。かつて自然と人間ははっきりとわけられていなかった、このピュシスに対応するのが超自然の悪意。

  • 鷲田氏

最相葉月氏が臨床心理士などの医療チームの派遣に取材したときのこと。ある避難所に「心のケアお断り」と貼ってあった。どういうことだろうか。

  • 植島氏

災害や死に直面したとき、人はどんな対処をするか。
宗教は死を必然とする。しかし人は、偶然とする。突然我が子が事故で死んだら、運が悪かったと思うだろう。しかし宗教は必然とする。寿命・定命・天命……、というように必然性で語られる。けれど実際、我が子を突然失ったとして、人を責めることや因果関係を説明されても納得はいかないだろう。けれどその必然からスタートするのが宗教。

  • 鷲田氏

でも植島さんはいろんな書きものに偶然を使っている。

  • 植島氏

偶然であるべきだと思うけれど、正反対の考えをしたほうが人が救われるならその方がいい。
死に対する考え方は3つあって、無・来世・転生。矢作直樹さんというER医師が『人は死なない*9』という本を出した時、医療関係者が! と思ったけれど、この人は死んでも魂は死なないという実感は成仏するという考え方にも繋がる。

  • 鷲田氏

納得がどういう形で起こるかということ。復興の過程は納得、どうやって立ち直るかというプロセスがある。
どうあがいても自分は自分でしかないという納得がいる。人生の中で、自分は誰の子か、男か女か、何を生業にしているのか・仕事、という3つが自分はこういう人間だと語るbasicなもの。今回の震災で、家族や仕事を失くした人は多く、更に地域にも帰れない。自分のidentity、納得の本質が欠落・喪失したケースがある。すると自分の物語が維持できなくなり、やり直さないといけない。語りなおしをしなければならなくなっている。

  • 植島氏

子どもが真っ暗が怖いから電気をつけておいてという感性はとても大切。

  • 鷲田氏

私もそう。震災以来暗闇が怖い。

  • 植島氏

それは大事な感覚。取り上げないといけない。
地球上の生き物のなかで死ぬという生物はほんの少ししかいない。ミトコンドリアやゾウリムシは分裂する。
死ぬことになった原因は性別で、それまで死は存在しなかった。つまり、生物学上決してマイナスではないはず。

  • 鷲田氏

動物は生殖能力を失ったら即死んでしまう。性と死とは結びついているが、人間だけは生きている。現役と変わらないくらい長く。

  • 植島氏

多細胞生物になって死が導入されたのはいいことのはず。それと、どうしてうちの子がって言うのとは違う問題だけれど。アポトーシスって、例えば胎児の水かきが無くなるのも小さな死。『生物と無生物のあいだ*10』に、3〜4日で全細胞が入れ換わるとあったが、人は刻々と死んでいる。生きるとは死に続けること。

  • 鷲田氏

そんななか、祭りはずっと守り続けられてきている。

  • 植島氏

生まれて死ぬ儀礼。個が死なないと、次に受け継がれない。死は不幸・宿命と思わないほうがいい。
私は近しい人を失くして、50年ぶりくらいに暗闇が怖くなった。人並みに。

  • 鷲田氏

植島さん、宗教家にならない?

  • 植島氏

ならないよ。

  • 鷲田氏

大学を代表したりと挨拶をしなければならない。震災以後、震災に触れずに済ませることはできないけれど、語るのが辛い。しんどいと思うことがあった。けれどこの語りづらかったということを正面から受け止めないといけない。
語りづらかったのは、1)被災の状況に差があり、典型的なものとして被害を語っても、異なる人が出てくる。2)自分では助けることもどうすることもできないもどかしさ。3)頑張って、大丈夫ですか、が虚しい問いであること。困っているに決まっているし、大丈夫のはずがない。これ以上どう頑張るのか、と考えた時にかける言葉がない。何気ない言葉自体で傷つけてしまう。という3つのことを思っていたから。
それで思うのは最相さんが取材した兵庫の医療チーム。一切喋らず、必要なことをしていく。
原発も共犯者のような気持ちで、糾弾する資格なんてないんだという思いがある。
色々あって語りづらさを感じるけれど、これからはそれを克服しないといけないと思っている。でなければ、一億総ざんげで終わってしまう。語らなければならない。

  • 植島氏

鷲田さんのように言葉や身体の微細な反応を見逃さない哲学者はこれまでいなかった。正面から対面していくのはとてもしんどいことだろうと思う。
私は外側から前に進む道をつくって再建していきたい。

  • 鷲田氏

兵庫の医療チーム*11はすごい。2・3日で支援を終えて帰り、またメンバーチェンジする。毎晩のチームの飲み会を欠かさない。このことによって辛い考えなどを変えてく。小さいことを細く長く続けて行く。

  • 植島氏

小さいことを細く長くはすべてに当てはまることだと思う。
鷲田さんはたくさん震災について書いているけれど、朝日新聞の『あれから3ヶ月』が最も読ませる文章だった。
日本列島に住んでいた日本人について、マルコ・ポーロなどから始まる多くの報告書が書かれている。どれも、素晴らしい、豊かだと、外国人による日本人論は皆褒めている。
今回の震災でも、日本人はパニックにならないし、恐れて泣き叫んだりしない。世界中回ったけれど、こんな国民はいない。これといって宗教はなく、西洋化しているけれど、我々の心の中に残っているものがある。日本を救えキャンペーンの広がりも、だからこそ。

  • 鷲田氏

災害の多さと惨憺についてはどう思う?

  • 植島氏

裏表。日本人は諦めることを知っている。inputされている。だから過剰にならないのかもしれない。

  • 鷲田氏

兵庫の医療チームも、語りたくても語れないことはシャットダウンすると。
これは通常の医師の業務についてだが、普段は患者さんの様子をちゃんとキャッチするけれど、アースをつけておかないと保たないのだと。
持続するために、諦めることは存在の健康にいいのかもしれない。

  • 植島氏

我々の共通の教え子に聞いた話。精神科医は聞いた瞬間に忘れて行くのだと。これは諦めることと共通している。

  • 鷲田氏

彼に、いい介護施設はどんな施設なのか見分け方を聞いたことがある。大声がするところはだめ、と即答された。スタッフが助けて! などと声を出しているところはいけない、静かな施設がいいと。そういう施設は、煮詰まった状況でも偶然おばあちゃんが通りかかって「ごはんですよ」と声をかけてくれたり、などと別の事が起こって煮詰まった状況が氷解する。そういう偶然が起こるのがいい施設。小さな積み重ねで変わっていく。
教育もそうあってほしい。保護する―されるという関係ではなく、この場所に子どもを入れておいたら勝手に育つ、くらいの。叱るんじゃなくなんとなく育つ。

  • 植島氏

私はこれから宗教をなんとかしたい。どうも汚れた言葉という印象がある。宗教という言葉には一神教的・独善的な他を排除する響きがある。戦後行政から弾圧されてぐちゃぐちゃにされてしまったまま。平常ではできないけれど、こんなときはもう少し宗教を考えてみようと思うのではないか。

  • 鷲田氏

震災のときに宗教家で活躍したのは、檀家さんが多いというような教団的な組織ではなく、その人自身が力をもっている、寺と関係なくネットワークを持っている人だった。
以前尼寺に行ったとき、おばあさんの尼さんがお経のことはよくわかりません、私らは一番下。お世話するだけ。お経はただ唱えるだけ。と言いながらも私をとてもあたたかく包んでくれた。

  • 植島氏

お経はスラング、ジャーゴンなんだから知らなくていい。あたたかさの方が大切。
もう時間がくるけれど、言い残したことは?

  • 鷲田氏

植島さんとは長い付き合いだけれど、大きく育ったな、と。
教育のところで話したように、図書館は勉強しに来るところ、というだけでなく、そこにいたら人が育つ場になったらいいと思う。

*1:会場の照明は落としてあった

*2:せんだいメディアテーク http://www.smt.jp/

*3:あれから3ヵ月 隔たりは増幅するばかり 2011.6.11.

*4:平成22年度卒業式・学位記授与式 総長式辞 PDF http://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/president/ja/guide/president/files/h23_shikiji.pdf

*5:日本縄文時代石器食料総説 http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000JAMBEY

*6:日本とは何か 日本の歴史〈00〉http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%80%8800%E3%80%89-%E7%B6%B2%E9%87%8E-%E5%96%84%E5%BD%A6/dp/4062689006

*7:環日本海諸国図(通称:「逆さ地図」)http://www.pref.toyama.jp/cms_cat/404030/kj00000275.html]

*8:東北を写す―東日本大震災の前と後の光景から― http://www.library.pref.mie.lg.jp/app/details/index.asp?cd=2011070493

*9:人は死なない-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4862381782

*10:生物と無生物のあいだ http://www.amazon.co.jp/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%A8%E7%84%A1%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%84%E3%81%A0-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E7%A6%8F%E5%B2%A1-%E4%BC%B8%E4%B8%80/dp/4061498916

*11:おそらく、[http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/shin/:title=ここ]に掲げられている方は関係者だと思います。定かではありませんが。by ivory_rene