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教員養成課程6年制について。答申(案)を読んでみました。

教育

先日のニュース「教員養成課程:「6年」確認*1」が気になったので、「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について(答申(案))*2」を読んでみました。
 
文科省が出している「概要*3」が最もシンプルですが、以下、項目をざっくりとまとめてみます。それでも、長いのですけれど。
 
〈1〉現状と課題
 
1.これからの社会と学校に期待される役割
 

  • グローバル化や情報化などの社会変化によって、学校教育で求められる人材育成像が変化している。
  • 21世紀を生き抜くには、「思考力・判断力・表現力等の育成」「学習意欲の向上」「多様な人間関係を結ぶ力の育成」等が必要で、これは、言語活動・協働的な学習活動を通じて効果的に育まれる。
  • 学校現場での課題は、いじめ、特別支援教育の充実、ICTの活用など複雑化。

   ↓
教員はこれらに対応できる専門的知識・技能を向上させ、チームとして組織的・効果的な対応を行う必要がある。
 
2.これからの教員に求められる資質能力

  1. 教職に対する責任感、探究力、教職生活全体を通じて自主的に学び続ける力
  2. 専門職としての高度な知識・技能
  3. 総合的な人間力

 
3.取り組むべき課題

  • 2.のような教員の養成には「学び続ける教員像」を確立。
  • 教科や教職に関する高度な専門的知識、新たな学びを展開できる実践的指導力を育成するには教員養成の高度化が必要。
  • 初任者が実践的指導力、コミュニケーション力等の教員として基礎的な力を充分に見に付けていないとの指摘がある。
  • 社会変化の中で知識・技能が陳腐化しないよう、教員の刷新が必要→「学び続ける教員像」の確立。
  • 教員が教職生活全体にわたって学び続ける仕組みを構築する必要がある。(そもそも大学との連携が不十分)

   ↓
教育委員会と大学との連携・協働により、「学び続ける教員」を支援するための改革が必要。
 
 
〈2〉改革の方向性

教員養成段階は大学、現職では教育委員会、と教員の教育は分断されている。連携・協働し、「学び続ける教員」を支援する仕組みを構築する。
 
1.教員養成の方向性
教員養成を修士レベル化し、教員を高度専門職業人とする。

  • 教職大学院は今後のモデル。学部新卒学生にも現職教員学生にも有効。現職教員学生は経験と勘に基づきがちだった実践を理論的に省察でき、また修了後は学校や教育委員会の中心に。
  • 学校現場の課題に、初任者は十分に対応できず課題を抱えている。初任者の育成を学校現場だけに依存することは困難。
  • 学部では教養教育と専門分野の基礎基本を重視して教育されている。新たな学びや課題に対応するだけの応用的な学びは、量的に困難。

   ↓
教員の高度専門職業人としての位置付けを確立するため、教員養成を修士レベル化することが必要。
 
2.教員免許制度の改革の方向性
 
(1)「一般免許状(仮称)」・「基礎免許状(仮称)」・「専門免許状(仮称)」の各種免許状を創設。#以下(仮称)を省略。

  • 「一般免許状」

 標準的な免許状。〈1〉2.の資質を有し、教科も教職ともに専門的な知識・技能を保証。学部4年にに加え、1〜2年程度の修士レベルの過程での学修。

  • 「基礎免許状」

 教職への使命感と教育的愛情を持ち、教科に関する専門的な知識・技能、教職に関する基礎的な知識・技能を保証。学士過程修了レベル。早期に「一般免許状(仮称)」の取得を期待。

  • 「専門免許状」

 教科・教職の特定分野に関して実践を積み重ね、高い専門性を証明。一定の経験年数を有し、大学院レベルでの教育、国または教育委員会と大学との連携による研修により取得。
 
(2)「一般免許状」と「基礎免許状」との関係

  • 「一般免許状」取得後に教員として採用。
  • 「基礎免許状」取得後に教員として採用→教職採用直後に初任者研修と連携・融合した修士レベル過程の修了後、「一般免許状」を取得。
  • 「基礎免許状」取得し、教員採用後一定期間のうちに修士レベルの過程等による学修によって「一般免許状」を取得。

 
(3)多様な人材の登用

  • 社会人等が専門性を生かしつつ教員を志せるようにするため、「基礎免許状」未取得者を対象に修士レベルの過程を設け、「一般免許状」を取得を可能にする。

 
(4)教員免許更新制

  • 10年経験者研修の法律上の実施義務との関係を含め、検討中。

 
 
〈3〉当面の改善方策
省略。まずは6年制についてのみを。


雑駁に言いますと、

  • 今後、教員養成過程を6年制(修士レベル)とする。
  • 教員を高度専門職業人として位置付ける。
  • 教員として採用されるのは学士課程でも可能だが、初任者研修など何らかの形で修士レベルの学修を実施。
  • 実現には法改正が必要のため、当面は現職教員の研修強化などの改善方策で対応。

実現のほどは未定。
という答申(案)とのことです。 
他にも、教職大学院の重点化(各県1校)などが盛り込まれていました。
とにかく教員はいまのままじゃいけないの! 知識も技能も、現状に対応できていない(だから問題が起きるの)でしょ、と。
キーワードは、"学び続ける教員"なのでしょう。そうでないと変化する社会に対応できないから、大学と教育委員会の連携が必要。それと、チームで課題にあたるコミュニケーション力。いじめ問題などで取り沙汰されるのは、校内での情報共有の甘さです。これは氷山の一角なのでは、と見なされて当然かもしれません。
  
専修免許状について、読んだ範囲に言及の箇所は見つかりませんでしたけれど、きっと淘汰されてゆくのだろうな、という印象を受けます。実際、私自身文学研究科を経て専修免許状を取得し、教員となっているのですが、修士課程の2年間は教職についての講義を受講せずとも第一種免許状から書き換えることが可能でした。それは、教科に関する知識を有している、とみなすこともできます。けれど上記"初任者"の抱える実践不足を感じましたし、今も感じています。初任者に即戦力になれ、と求めるのは些か無理があるように見えますが、「生徒からすれば、私*4もあなたも先生なんだから(即戦力でありなさい)」と言われたことはずっと忘れられません。現職にある以上、"教員"であらねばならないのだという重圧を感じ続けています。
 
また、私は文学部に所属しながら教員免許を取得しました。大学は、教育学部の大きい、教育に関する研究開発に力を入れているところでした。同期の他の教員と話していると、それぞれの受けてきた学びが実はかなり違うのではないか、と気付く場面があります。「答申(案)」にも国家試験の導入の議論があったことが言及されていますが、学校によって指導が異なるのが現状であり、課題なのかもしれない、と。これは国家試験を経ていない国家資格すべてに言えることなのかもしれませんが。
 
「答申(案)」を読んでいて、中教審はいったい教員にどこまで求めるのっ、と腹立たしく思うこともありました。けれど、現行のままの教員養成課程では新指導要領や現在教員の抱えている様々な問題に対応しきれないこともまた事実だろう、と。それは現場での"教員としての経験と勘"を磨くなんて悠長なことを言っている場合ではないのだろう、と頷ける部分も多くありました。

*1:毎日新聞 7/24 東京朝刊:http://mainichi.jp/feature/news/20120724ddm012100059000c.html

*2:中央教育審議会(第81回) 配付資料」の資料1-1〜3:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/1323733.htm

*3:PDFファイル:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2012/07/24/1323733_2.pdf

*4:彼女は40代でした。