おじーちゃん、どのくらい図書館に行くの?

父方の祖父(87)と母方の祖母(72)が健在です。祖母はコーラスにジムに写経にとあちこちでかけて楽しそうにしています。祖父は、耳が遠くて年相応に弱ってきているもののまだ達者。畑仕事と料理、読書が趣味です。この間、祖父と図書館の話をしました。忘れないうちにここにとっておこうと思います。

祖父は昼食のあとにいつも本を読んでいます。バーコードがついているので、いつも図書館の本のようです。図書館は歩いて4~5分のところに、14年くらい前に建ちました。先日、久しぶりにふたりきりでお昼だったので、何か話題がないか[*1]と思ってふってみました。


「いつも、どのくらい図書館に行くの?」
―― 2週間に1回で、借りるのは2冊。いつも2冊。読むのは歴史小説ばかり。他のものはおもしろくない。新しいと、どんどん変わってしまってわからないから。捕物帖がいい。黒岩重吾澤田ふじ子池波正太郎はええな。この間は、藤堂高虎[*2]の本を読んだ。

「歴史のばっかりじゃ、図書館にあるのなんて読み終わってしまう[*3]でしょう? 」
―― 小さいの(文庫のこと)はもう読んでしまった。それで、大きいの(四六版のこと)を読んでいる。それも大抵読んでしまって、前は重たいから読んでいなかった厚いのを読んでいる。でももうあんまりないんだ。

ローラー作戦みたいな借り方していたとは……。粗方読み終わっているって一体どれだけ通ってるの。

「いつから行ってるの?」
―― できたときからだから、10年くらいだなあ。

「お…おじーちゃん、職員さんに言ったら探してもらえるから、読んでない本みつかるよ。こういうの読みたいって言ったら、買って入れて貰えるよ」
―― いや、いい。

「なんで?」
―― 図書館の人と話したことないしな。余分なことは話しかけられんし話そうと思ったこともない。

ええっ。私、同じだけ通ってるしむしろ大学進学したりして空けてるけど、顔なじみの職員さんいるよ。久しぶり、みたいな話くらいしてるよぅ。耳が遠いしそんなもんか。私は、このくらいの年齢の利用者が少ないから[*4]目立つんだろうか。やや衝撃。

「でもでも、じゃあ見つけたの全部読んだらどうするの?」
―― また始めから読むかなあ。

ええええっ。始めから、って、文庫→四六版(薄いの)→四六版(厚いの)を繰り返す気だろうか。そんな図書館の使い方考えたこともなかった。えええええっ。

「前に読んだ本なのに?」
―― 話を覚える気もないしな。また読んだらおもしろい。

「ええと、本は買わないの?」
―― お父さんが買ってきてくれる[*5]からいい。図書館の本を読んでしまったら、雑誌を買おうかと思っている。いろんな話がいっぺんに読めるから。料理と花(園芸)の雑誌は買っている。

「じゃあ図書館ができるまでは、買って読まなかったの?」
―― 仕事が忙しかったら読まない。名古屋に住んでいた時は貸本屋があったからよく借りた。まあ、図書館ができてからずっと行っているから、毎日昼ご飯を食べたら読む。読まないと物足りない。


後は話がそれて、貸本屋がどんなだったか、戦後の農地改革はひどい、変動相場制になって会社を潰した、だのを聞いておりました。

私の感覚と全然違ったのは、片端から読む、繰り返し読む、の件です。読みたいもの、調べたいこと、という目的があって図書館を利用するのではないのだなあ、と。書籍代節約、著作者の損失、などという単語が浮かんだのですが、少し違うような気がします。祖父にとっては、読みたい本が図書館にあるのではなく、図書館にある本が読みたい本とだと言えるのかもしれません。文字通り、図書館がなければ出会わない本がたくさんあったのでしょう。もう少し能動的な利用をすればいいのに、とは思うのですが、また様子を聞いて経過観察です。ええええっ、~すればいいのに、を連発してみたものの、さして変わらないような気もします。


このような記事

を拝読しましたので書き添えますと、大活字本は利用していないようですし、生涯学習講座でよく取り上げられる歴史や自分史にも興味はないようでした。図書館に求めることは、本を読む、これだけ。
祖母なら、「視点・論点」で紹介されているような「高齢社会の図書館サービス」、佐賀市立図書館の「図書館の使い方講座」などが催されたら積極的に参加していくのでしょう。性格や体調(耳が遠い→話すのが億劫→別に講演会・講座なんて行きたいと思わない)の問題もあると思いますが。

せっかく祖父と図書館の話をしたので、メモ。そしてこんな使い方をしている人がいますよ、のご紹介でした。

*1:たいてい花や野菜や祖父の頭髪があるくらい昔の話をします。祖父は私にもっとご飯を食べなさいという話をします。時事問題は平行線をたどるので避けます。

*2:地元、津藩主。

*3:元は町立の図書館。小さい。

*4:田舎なので。選挙に行くと如実にわかるのですが、高齢者がとても多い。

*5:佐伯泰英あたりは、父が祖父のために揃えています。