『iPad教育活用 7つの秘訣』を読みました。

デジタル教科書などについてニュースや本をチェックしています。どんどん忘れていくので、その読書メモを書いておくことにしました。私が理解・要約できた範囲に限っています。適当ではない箇所もあると思います。ご容赦くださいませ。

iPad教育活用7つの秘訣―先駆者に聞く教育現場での実践とアプリ選びのコツ

iPad教育活用7つの秘訣―先駆者に聞く教育現場での実践とアプリ選びのコツ

“秘訣”として7人へのインタビュー、教育関係者による5つのコラム、3つの座談会、1つの対談と手記からなっています。
目次については、発行している株式会社ウイネットのサイトから詳しくご覧いただけます。

メインとなる“秘訣”のメモと感想。

小学校編

秘訣1 上所小学校 片山敏郎先生「子どもたちを先生に。自由でシンプルな発想で始めよ!」

日本デジタル教科書学会

  • 片山先生がデジタル教科書学会を発足させるまで。
  • 初代iPadを使った研究授業。
  • クラスの状態を見極める。規律を守れる状態か、など。
  • 新しい指導法を学ばなくても、それぞれのスタイルに取り込めばよい。
  • iPadは紙の教科書の代わりにはならない。
  • 必要なのは支援と挑戦、コンテンツの質向上。

会長が小学校の先生、というのが新しいと思っていました。twitterで議論をしていたのがきっかけとは!
クラスの状態については、以前読んだ記事でも言及されていました。「http://mainichi.jp/feature/news/20120908ddm013100153000c.html(デジタル化を)推進する人たちは、子供たちがみんな仲良しで、勉強する「土台」ができている牧歌的な学校を想定していませんか。」[*1]と。
ちなみに上所小学校は全26クラスと大規模校。横並びでの指導が必要とされているでしょうに、どうやって切り拓かれたのか。

中学・高校編

秘訣2 広尾学園 金子暁先生「デジタルとアナログ。それぞれの良さを使い分けよ!」

広尾学園
広尾学園youtube :授業や教員研修の動画。

  • 2011年新設の高校「医療・サイエンスコース」で導入(学校の購入したiPadを貸与)。2012年度中学校新入生に導入(家庭での個人購入)。ルールを厳格にした。
  • 必ず授業で使うように、ではなく、生徒の自主性に任せた。
  • デジタルとアナログの使い分けを意識。
  • 今後の課題は既存の教育と新しいスタイルのバランス。その中で受験に対応できるようにしていく。

導入の費用を学校と家庭、どちらが持つのか。文科省総務省の指定校は国から。千葉県袖ヶ浦市(後述の記事)と導入予定の佐賀県[*2]は家庭。ニュースには書いてあったりなかったり。タブレットの導入とデジタル教科書はイコールではないけれど、今後デジタル“教科書”の導入、となったときに国の判断が気になるところです。

秘訣3 袖ヶ浦高等学校 永野直先生「『置き換え』はしない。さらに広げるための使い方を!」

千葉県袖ヶ浦市教育委員会
インタビュー記事[*3]。

  • 情報を日常の学習にどう活かすのか。殊更に「情報教室」に移動するのではなく。
  • 個人購入とすることで、学習の履歴を生徒自身が蓄積することができる。貸与だとデータは破棄されてしまう。
  • 社会とのつながりを意識。地域の人に伝える、など。
  • iPadツールだと認識させる。
  • 既存の教育方法の置き換えではなく、広げられるように。

ニュースチェックしている中で、千葉県の取り組みには注目しています。千葉で子育てするのはおもしろそうだなー(……そんな予定は全くありませんが)

大学編

秘訣4 大阪大学 岩居弘樹先生「教えない授業を。学生同士で学び合う場を創れ!」

Reserchmap

  • 1980年代から取り組んできたドイツ語のビデオ学習のツールに、iPadを使用。
  • グループワークとビデオにこだわり。
  • 協働学習において、教師はファシリテーターのような存在に変わってくる。

秘訣5 青山学院大学 伊藤一成先生「『使うこと』と同時に『使わない』という選択を教えよ!」

Reserchmap

  • ノートPCや重たい教科書を持ち歩かない学生が、iPadを持ち歩くメリット。就活などで忙しい中でも論文を読んでもらう。
  • 学習データを集約し、ポートフォリオに。
  • 学びやアイディアをiPadを使って形にする。
  • デバイスとの距離感をどう保つのか。使わない、選ぶことを教えることも必要。

青山学院社会情報学部といえば(古いけど)2009年のiPhone導入[*4]とiPhoneを使った資格試験勉強[*5]。

専修学校各種学校

秘訣6 デジタルハリウッド 栗谷幸助先生「教室の枠を超えよ。そこに新たな学びが見つかる!」

電子書籍を活用した教育スタイル創造研究会デジタルハリウッドが他社と共に発足させたスクールPad構想の研究会
プロフィール

  • 2010年のiPad発売当初から「スクールPad構想」があった。学校を持ち運びしよう、というコンセプト。
  • 当初のiPadは使いにくかった。授業で使うものではなく、予習のツールとして使うように。
  • 動画コンテンツで予習→授業で応用→補習や復習。学力向上に効果を発揮している。
  • 動画作成はライブ感とストーリーを意識。
  • 教室に限定しない。目的をはっきりさせる。学ぶためにどういう使い方ができるのか、を。

まとめるために読みかえしていて、これ、反転授業だなあ、と気付きました。書くことにしてよかったです。どんどん忘れてますね。

学習塾編

秘訣7 俊英館 小池幸司先生「まずは『人』ありき。負担を抑えた段階的な導入を!」

インタビュー記事[*6]
PISA型学力養成講座「ひらめき★脳育コースi

  • iPadの塾への導入は初。触れたことのない講師もいたし、3.11直後で研修が困難。すぐに使える状態にセッテイングしマニュアルを充実させた。→使いこなすことはできなくても、使った授業、はできる。
  • 考えさせるための授業。
  • iPad1台とプロジェクターからスタート。ノートPCより安い。
  • シンプルかつローコストから始めて、新たな教育にどう取り組むか。

ひとり1台じゃなくてもできることは様々、というのがよかったです。PC1台とプロジェクター、私は使ったことがありませんでしたけれど、視聴覚教育研究会の実践例ではよく見学させて貰っていました。iPadにすることでどう変わるのか、もう少し知りたいな、と。

研究リポート 高等職業教育におけるiPad活用の優位性

  • 教える役割=講師、学生の予復習とスキマ時間をサポートをサポートするためのiPad
  • 就職活動支援
  • 学生のプライベート情報端末と校内教育支援プラットフォームの導入はセットで。


共通していること。

  • 新しい教育方法に置き換えるのではなく、既存のものと併用・発展させるための、ツール
  • シンプルに、無理をしない。
  • 使用目的やルールを明確にすることで、生徒が使いやすくなる。

実践例紹介の為の本で、その点はとても満足です。
無理をせずに取り入れる、そこから新しい・広げていく教育方法に繋げる、というのが肝心のようです。“日常”を維持しながらだと、そこまでリソースを割けないというのもあるでしょうが。でもそれが、今・まさに教育を行っている人の参考になるのかな、と思いました。
ここに出てくる人たちは、以前から評価されていたんだろうけれど、この本が発売されて特に取り上げられるようになっている、という印象を受けています。

私的に開拓していった人たちなので、今後、総務省文科省の指定校によるフィードバックを期待したいな、と思っています。既にフォーラムなどでの発表はありますが、こういうのも。この7月に出たばかりです。未読。

足代小フューチャースクールのキセキ

足代小フューチャースクールのキセキ

*1:デジタルで学ぼう:デジタル授業への賛否/上 慎重派 手で字を書くことが大切|毎日新聞(2012.9.8)

*2:佐賀県立高校全校で導入予定のタブレットWindows 8に決定|リセマム(2013.7.12)

*3:主体性を育むタブレット授業、千葉県立袖ヶ浦高等学校(1/3)|リセマム(2013.6.25)

*4:青山学院大学ソフトバンク、社会情報学部にiPhoneを導入|ケータイWATCH(2009.5.14)

*5:青山学院大学社会情報学部がiPhone(TM)を活用して経済産業省の掲げる高度IT人材の育成を実践~すきま時間を有効活用して資格取得をめざす~|大学プレスセンター(2009.7.15)

*6:iPad導入事例】 iPadによる授業で差別化を目指す学習塾に学ぶ、企業におけるiPad導入と活用のためのポイントとは?|ビジネス+IT(2011.7.19)