志望理由書を指導するとき ―とりあえず紙を切る。
ひとりで書き上げられる生徒は、「告白になぞらえてみる。*1」のように構成することを手伝います。告白以外に、少しハードルの高い依頼を保護者の方にすると仮定して、「一番ほしいシューズを買ってもらうためにどうやってOKをもらうの?」と訊くこともあります。告白の話題にのらない(だろう)生徒*2には、質問を変えて構成を組み立てるお手伝いを。
けれど、書けません! 何を書いたらいいのかわかりません! と全く書かずにこちらに頼ってこようとする生徒もいます。困ります。けれど、どうしたらいいのか分からないのだからしかたありません。
書けない生徒の話を聞いていると、志望理由も将来の目標も、打ち込んだことも、単語で返してきます。そんな一問一答じゃ、書くことないよね。何を書いたらいいのかわからなくなるよね。そこで。
とりあえず紙を切って渡します。手のひらサイズ。紙片に、志望理由書に書くべき項目*3の答えを思いつく限り書いてもらいます。一人でどうしてもできないときは、隣で志望理由書になり代わってどんどん質問をします。一問一答・一用紙。生徒は、答えながら紙に書く。例えば……
- ○○大学の何学部何学科にいきたいの? 経済学部で、経営学科。
- なんでなんで? 家がカフェだから継ごうと思って。
- なんで継ぐって決めたの? 親を見てて。
- どんな姿を見てたの? うー。
- じゃそれ、後で考えよう。高校時代に打ち込んだのは? 陸上部。長距離。
- 陸上をしていて、何が身についたの? 忍耐力と、コミュニケーション力かな。
- おー、なんで?つらいときも、毎日走ったし、家に帰ってからも走った。それと、走るのはひとりだけど、部長だったしみんなをまとめてた。
- それいいね。もう少し、自分にしかない経験を具体的に言おう。
と、いうように。
書くときには、紙片の上部に書いて余地を残しておきます。余りには、思いついたことや答えられなかった問いを後から書き足します。
ひととおりの項目を書き終わると、志望理由書のパーツ群の完成です。次にこの紙片を結論―理由(具体例)―結論 という骨組みにしていきます。前回の記事のような型を提示して、紙片を並べかえるのです。骨組みまでできたら、一応の目処はつきました。「何を書いたらいいのかわかりません!」からの脱却です。あとは肉付け。紙片の余った箇所に説明や具体例を書き足します。
紙片を並べたとおり書いたら、一応なんとか文章の体裁になるはず。どうにかして、書かないと。はじめから、まっ白なエントリーシートに向かうのは誰だって苦痛です。教員に大学用ノートを作るよう指導され、せっせと何か書こうとするものの、2行で困って×つけて消して、また1行書いては消して。ノートとエントリーシートに共通しているのは、書くべき量と罫線です。紙片なら、ちいさいからなんとなく書ける気がする(していてほしい)。自分の好きな文字のサイズで書ける、ぐしゃぐしゃな字でもいい。書くために一歩踏み出すための、紙片です。
わかりません! の生徒は途方にくれていたり、自信が持てずにいたりするので、書けるじゃない、ほらできるよ、と励ましてはげまして送り出します。大学に熱意と愛が伝わると、いいな。